養子縁組による相続対策
≪2009/10/13≫
相続税における養子縁組のメリットは主として次のようなものです。
(1)相続税の基礎控除額(1人1,000万円)、生命保険や死亡退職金等の
非課税枠(1人500万円)が拡大します。
(2)相続税を計算する際の税率が下がり、相続税が軽減されます。
(3)孫と養子縁組をすれば、相続税が課税される機会を1世代飛び越す
ことができます。
[具体例]
財産3億5千万円で配偶者なしで子供2人の時に、養子縁組をして相続人が3人になった場合
相続人が1人増えるため基礎控除額は1,000万円増え、相続税の総額も7,800万円から6,000万円になるため、1,800万円節税できます。
| 基礎控除額 | 相続税の総額 | |
|---|---|---|
| 現状(相続人2人) | 7,000万円 | 7,800万円 |
| 養子縁組後(相続人3人) | 8,000万円 | 6,000万円 |
| 差額 | +1,000万円 | ▲1,800万円 |
注意点1:養子の数の制限
法定相続人の数に含めることができる養子の数は、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで認められます。なお、民法上は養子の数に制限はありません。
注意点2:孫を養子にした場合は2割加算
孫(代襲相続をする孫を除く)を養子にした場合は、孫が取得した財産の相続税負担額が2割加算されます。
注意点3:養子が認められない可能性もある
相続税を不当に少なくするために養子縁組が行われたと判断された場合は、相続税の計算上は養子がいないものとされます(養子縁組自体が取り消されるというものではありません)。
例えば・・
・将来お墓を守ることになる孫に自分の遺産を遺したい
・自分の面倒をみてくれた息子の嫁を養女にして遺産を
遺して感謝の気持ちを示したい など
従って、養子縁組による相続の際の節税はあくまでも結果であり、それが目的とはなり得ません。
注意点4:相続人間でトラブルになる可能性も
養子縁組を結ぶことにより、他の兄弟と同様の相続権が発生します。財産がある場合は、事前に家族間で充分な話合いが必要となります。たとえば、兄弟が数人いる場合に、特定の兄弟の子を養子にする場合は、その家族だけ相続分が増えることになり、円滑な相続のためには、他の相続人との公平を図ることが必要となります。
平成21年度税制改正のポイント
≪2009/07/28≫
平成21年度税制改正は、100年に一度の経済危機のなか、内需刺激による景気回復のため、減税一色となっています。
1.法人関係税制
(1)中小企業に対する軽減税率の時限的引下げ
平成21年4月1日から平成23年3月31日までに終了する事業年度において、中小企業の所得金額のうち年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率が現行の22%から18%へ引下げられました。
| 対 象 | 現行税率 | 引下げ後税率 | |
|---|---|---|---|
| 中小企業 (資本金1億円以下) |
年所得800万円超の部分 | 30% | 30% |
| 年所得800万円以下の部分 | 22% | 18% | |
(2)中小企業の欠損金の繰戻還付の復活
平成21年2月1日以後に終了する各事業年度に生じた欠損金額について、「欠損金の繰戻還付制度」が復活することになりました。
「欠損金の繰戻還付制度」とは、前年度は黒字で法人税を納めた企業が、経営悪化などにより今年度赤字に陥った場合、前年度に納付した法人税の還付を受けることができる制度です。
ただ、還付にあたって、「調査する」と法律に明記されています。必ず「実地調査」をするとは思われませんが適用する際の注意点となります。
(3)中小企業の交際費課税の軽減
平成21年4月1日終了年度から、中小企業の交際費の定額控除限度額を年400万円から600万円に引き上げられました。
改正により、交際費のうち「600万円」までは9割が税務上の費用となり、「600万円」を超えた部分は全額費用にならないというものです。
2.相続税(贈与税)制
(1)非上場会社株式等についての相続税の納税猶予制度等の創設
一定の要件の下で、非上場会社の経営を承継する相続人がその会社の株式等を相続した場合、その株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
なお、この制度は、平成20年10月1日以降の相続に遡及して適用されます。
(2)非上場会社株式等についての贈与税の納税猶予制度の創設
一定の要件の下で、認定中小企業者の代表者から株式等を贈与され、その会社を経営していくこととなった後継者は、その贈与に係る贈与税の全額が納税猶予されます。
また、贈与の死亡時には、株式等を相続により取得したものとみなし、経済産業大臣の確認を受けた場合に、相続税の納税猶予が適用されます。
(3)住宅取得のための時限的な贈与税の軽減
平成21・22年において、20歳以上の者が直系尊属(父母、祖父母など)から住宅取得資金の贈与を受けて、翌年3月15日までに住宅等を取得し、遅くとも年末までに居住の用に供した場合、500万円までは贈与税を非課税にするというものです。
実際には、この500万円に暦年課税を選択すれば、基礎控除110万円とあわせた610万円までが非課税となり、相続時精算課税を選択すれば、3,500万円とあわせた4,000万円までが非課税となります。
贈与・相続を考える上では、かなり有利な規定です。
3.金融・証券税制
平成21年1月1日から平成23年12月31日までの間の上場株式等の配当所得及び譲渡所得に対する税率は、引き続き10%(所得税7%、住民税3%)の軽減税率となります。
| ~平成20年 | 平成21年 | 平成22年 | 平成23年 | 平成24年~ | |
|---|---|---|---|---|---|
| 税 率 | 10% (所得税7%+住民税3%) |
20% (所得税15% +住民税5%) |
|||
| 配当と 譲渡損の 損益通算 |
- | 平成21年~ 確定申告による対応 平成22年~ 源泉徴収口座内における損益通算を可能に |
|||
4.所得税制
(1)住宅ローン控除の拡充
平成21年から平成25年までの住宅ローン控除が拡充されました。なお、今回の改正により、所得税額から控除しきれなかった金額があるときは、翌年度の個人住民税かのうち一定額(前年の所得税の課税所得金額の5%まで、最大9.75万円/年)を控除できることになりました。
| 居住年 | 控除期間 | 借入金の年末 残高の限度額 |
控除率 | 最大控除額 |
|---|---|---|---|---|
| 平成21年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.0% | 500万円 |
| 平成22年 | 5,000万円 | 500万円 | ||
| 平成23年 | 4,000万円 | 400万円 | ||
| 平成24年 | 3,000万円 | 300万円 | ||
| 平成25年 | 2,000万円 | 200万円 |
| 居住年 | 控除期間 | 借入金の年末 残高の限度額 |
控除率 | 最大控除額 |
|---|---|---|---|---|
| 平成21年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.2% | 600万円 |
| 平成22年 | 5,000万円 | 600万円 | ||
| 平成23年 | 5,000万円 | 600万円 | ||
| 平成24年 | 4,000万円 | 1.0% | 400万円 | |
| 平成25年 | 3,000万円 | 300万円 |
*認定長期優良住宅とは、長期優良住宅普及促進法により、建築に当たって計画が長期耐用で安全な一般基準を満たすものとして認定された住宅をいう。
(2)生命保険料控除制度の改組
従来の一般生命保険料控除と個人年金保険料控除に加え、新たに介護医療保険料控除が創設され、それに伴い控除限度額も変更となります。この制度は、平成24年分以後の所得税(住民税は平成25年分)から適用されます。
なおこの制度は、平成24年1月1日以後に締結した生命保険契約等について適用され、同日以前に締結した生命保険契約等は従前の制度を適用します。改正前と改正後の両方の控除の適用があるときの合計適用限度額は所得税12万円(住民税7万円)となります。
| 現 行 | 平成24年1月1日以後締結 | |
|---|---|---|
| 一般生命保険料控除 | 5万円(3.5万円) | 4万円(2.8万円) |
| 個人年金保険料控除 | 5万円(3.5万円) | 4万円(2.8万円) |
| 介護医療保険料控除 | - | 4万円(2.8万円) |
(注)かっこ内は住民税の金額
| 年間の支払保険料等 | 控除額 |
|---|---|
| 2万円(1.2万円)以下 | 支払保険料等の全額 |
| 2万円(1.2万円)超4万円(3.2万円)以下 | 支払保険料等×1/2 + 1万円(6,000円) |
| 4万円(3.2万円)超8万円(5.6万円)以下 | 支払保険料等×1/4 + 2万円(1.4万円) |
| 8万円(5.6万円)円超 | 一律4万円(2.8万円) |
(注)かっこ内は住民税の金額
5.土地税制
(1)土地の長期譲渡所得の1,000万円特別控除の創設
平成21・22年に土地等を取得し、5年を超えて所有して売却した場合には、譲渡益から1,000万円の特別控除を認める制度ができました。
個人・法人ともに適用となりますが、購入する相手方や法人の棚卸資産は除外など多少制限があります。この適用を受ける場合、購入の時期や金額を明確にしておくことが必要となります。
(2)土地等の先行取得した場合の譲渡所得の特例
平成21・22年に事業用の土地等を取得し、その後10年以内にすでに持っていた他の事業用の土地等を売却した利益を購入価格の80%(22年分は60%)を圧縮記帳(課税の繰延)ができるという規定です。
個人事業者及び法人ともに適用になりますが、適用に制限があります。また、取得した時の税務署への届出が絶対条件になっていますので注意してください。
事業承継~平成20年度税制改正について
≪2008/07/28≫
非上場株式の納税猶予
中小企業の事業承継の円滑化は、「経営承継円滑化法」で規定される「民法特例」と「金融支援」、また、平成21年度税制改正で創設される「事業承継税制」の3本柱となります。
経営承継円滑化法の概要
■遺留分に係る民法の特例
現行の民法では、各相続人に認められている「遺留分」(最低限の財産を相続できる権利)によって、事業を承継する相続人の相続株式が削られる可能性があり、結果として経営が不安定になるという側面があります。
これが民法の特例として、①現経営者が事業承継者に株式を自然贈与した場合に、全推定相続人の合意があれば、その株式相当額を遺留分算定の際の財産から外すことが認められます。また、②生前贈与株式の評価額を予め固定することが認められ、後継者の貢献による株式価値上昇分が遺留分減殺請求の対象外となるため、経営意欲が阻害されません。
■金融面での支援措置
代表者の死亡などによる事業承継の場合、信用不安等により運転資金のショートを生ずるケースがあります。そのため円滑な事業承継を進めるために、公的保証や低利融資などの優遇措置が図られます。
適用期日
経営承継円滑化法は、平成20年10月1日から施行され、民法特例は平成21年3月1日から施行されます。
事業承継税制の概要
事業承継をする相続人が、代表者であった被相続人から会社の株式を取得し、経営を行っていく場合には、その事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続した株式に係る課税価格の80%に対応する相続税の納付を猶予することとなります。
この特例は、平成21年度税制改正で創設されますが、経営承継円滑化法の施行日である平成20年10月1日以降に発生した相続から遡及適用される見込みとなっています。
この特例の具体的要件は、以下の通りです。
■事業承継相続人
経営承継円滑化法における経済産業大臣の認定を受けた一定の中小企業の発行済株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、同族関係者の中で筆頭株主である後継者。納税猶予となった株式を死亡時の時まで保有し続け、相続税の申告期限から5年間は代表者でなければならない。
■被相続人
会社の経営者で、発行済み株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、同族関係者(事業承継相続人を除く)の中で筆頭株主であったもの。
■適用対象株式
相続開始前からすでに保有していた議決権株式を含めて、その会社の発行済み議決権株式の総数の3分の2に達するまでの部分。
相続税制の抜本的見直し
非上場株式の納税猶予の制度創設に合わせて、相続税課税方式の抜本的な見直しが検討されています。
これまでの相続税の総額を法定相続人の数と法定相続分により算定する「法定相続分課税方式」では、特例を適用して株式を相続した事業承継相続人以外の相続人に対しても税額軽減が生じ、また相続人の中の1人が相続を滞納した場合、他の相続人に連帯納付義務が生じてしまうなどの問題がありました。
これを相続等により遺産を取得した個々の相続人ごとに課税する「遺産取得課税方式」に改正することが検討されています。
年金記録の訂正による公的年金の増額支給分について
≪2008/03/01≫
今回は私たちが今、最も関心があり社会問題化している年金支給についてです。
年金時効特例法が昨年7月に施行されました。施行以前は、年金記録の訂正された結果、年金が増額した場合、時効により直近5年間分の年金しか受け取ることができませんでしたが、これからは、時効によって消滅した分も含めて、本人又は遺族が全額受け取れるようになりました。
〔1〕 本人に増額支給された年金の税務上の取扱い
公的年金等は、税務上、雑所得として取り扱われます。
まず、直近5年間分の年金は、本来の支給日の属する年の雑所得として課税されます。そして源泉徴収の対象になります。確定申告書を提出している人ならば、修正申告する必要があります。
次に、過去5年超の年金は申告する必要はありません。そのうえ源泉徴収の対象ともなりません。その理由は、国税通則法で国税の徴収権の消滅時効を5年と規定しているからです。
〔2〕 遺族に増額支給された年金の税務上の取扱い
年金記録の訂正によって年金が増額された人が既に死亡している場合は、遺族に増額分の年金が支払われることとなります。この場合の取扱いは2つに分かれます。
まず、遺族が直近5年分の年金を受け取るときは、遺族が実際に支給を受けた年の一時所得として課税されます。このケースでは源泉徴収の対象にはなりません。
次に遺族が過去5年超の年金を受け取るときは、申告する必要はありません。

本人に増額支給された場合で、修正申告をして、税額の修正によって延滞税がかかってしまうケースがあります。行政側の不備が原因で修正申告をしているのに、本税は仕方がないですが、この延滞税は少し納得いかないですね。


